五月は好き過ぎて逆に毎年調子崩してるけどもうそういうの全体をけっこう俯瞰してすんなり通過していける気がする大人だし、でもそれって悲しいことだよねとかももう別になくて言うことねえ

「おかしな気がするね」とピストーリウスが言った。「ぼくがかつて神学者であり、もすこしで牧師になろうとしたなんて。だが、その際ぼくが犯したのは、形式の誤りにすぎないんだ。僧であることはぼくの天職であり、目標であるのだ。ただぼくは早まって満足し、アプラクサスを知る前にイェホヴァに奉仕してしまったのだ。ああ、すべて宗教は美しい。宗教は魂だ。キリスト教の聖餐を受けるか、メッカに巡礼するかは、どっちでもいいことだ」
「それならあなたはやはり牧師になれたでしょう」と、私は言った。
「いや、シンクレール、違う。ぼくはうそをつかねばならなかっただろう。ぼくたちの宗教はまるで宗教でないように営まれている。まるで知的な事業であるかのようにやっている。ぼくはカトリック教徒にはどうにかなれるかもしれない。が、新教の僧はーーだめだ!数名のほんとの信者をーーぼくは知っているがーー彼らは文字どおりのことを好んで信じる。彼らにむかって、キリストはぼくにとっては人物ではなく、英雄であり神話であり、巨大な幻像ーー人類が自分自身が永遠の壁に描かれているのを見る幻像ーーだ、などと言うことはできないだろう。賢いことばを聞くために、義務を果たすために、なにひとつ怠らないために、などという理由で、教会にやってくる連中に対しては、ぼくはなんと言うべきだろう?彼らを改宗させる、ときみは言うのか。いや、そんなことはぼくはぜんぜん望まない。僧は改宗させることを欲しない。僧はただ信者のあいだに、同類の人々のあいだに生きることを欲し、われわれがわれわれの神々を作るその感情の体現者、現れであろうと欲する」

ヘルマンヘッセ「デミアン高橋健二訳から、のちにシンクレールに捨てられる年長者ピストーリウスがまだ師であった時期のセリフ。エヴァンゲリオンのテーマもこんなんじゃなかったっけか。

ひとむかしまえの訳書のものを読むと当時の日本語の仮名遣い言葉遣いになじみないというのもありつつ、これは劣訳、誤訳だろうなあ、と原文をなんとなく英語で(ヘッセは英語じゃないだろうけど、、大戦中に母国語じゃない言語で本書いてたっていうの、誰だっけ、ヘッセじゃなかったっけ)想像しながら(もちろん英語でまるまる書いてあってもおれは読めないんだけど)、しかしまあその辺も、つまり誤訳を許したという意味でその時代のリアリティだ、と二重の読書を楽しむような気分で。
検索したらやっぱりみなさん考えることだったよう。
http://ameblo.jp/yoshiko-art/entry-11623117904.html


そんで話としては飛ぶけど同時に検索に引っかかってきたこれ。
http://blogs.yahoo.co.jp/nietzsche_rimbaud/49365450.html
編者がこのあと話をどう持って行きたいのかびくびくもんだけど、去年井伏鱒二黒い雨を読んだときにひじょうに強くなった気分と重なった。受験勉強というのを経験しなかったおれに常識がないというだけのことなのかもしれんけど、つまり戦争のあった時代の日本と、いまの日本はなにもかも違う国だったという認識はかなり甘いものだったのだと思う。防衛大にいった友達が、戦闘機なんて毎日のように飛んできてるよと言ってたのを思い出す。おれなんて一度散歩の途中で猫が車にひかれるのを見た場所を通るたびに、生きてたものが死ぬ瞬間を目の当たりにしたショックを思い出して泣きそうになんのに。

本を読むときにBGとして聞く音楽を選ぼうとしたときにふと思ったのだけど、いつからか本を読むこと自体が、本を読む時に聴く音楽と、自分自身から等距離に平行に流れる川のような具合に、その時間全体を楽しむことのためにともに等しくBGになっている。音楽を前ほど熱中して聞かなくなったのもたぶん同じことで、音楽だけ、あるいは文章だけを集中して楽しもうとする気分はいつのまにやらずいぶん遠いものになってる。これは成長ということもできるしなにかしら喪失したとも言える、確かなのはなにごとも近視眼的に向き合うほうが楽しさも苦しさも味が濃いということ。

うちのあたりは庭付き一軒屋の多いとこで、いま歩きながらどっちを見ても新緑のあの色に溢れてる。花もいろんなのが咲きまくってるけど、どちらかというと葉っぱのほうに感動するということがわかった。煙草を吸いたくならない唯一の状況が葉っぱに囲まれてるときだ。でもつつじの花はほんとに好きだ。

五月は楽しみなライブがたくさんある。楽しみだ。いま同じ瞬間に戦争してる場所があるということを忘れないままに、ライブを純粋に楽しみだと思えるか、震災関連死三千人というのを忘れないままに、開き直る以外の方法で。いや、さっぱりわからん。