⑫Setagaya Wandering Education

先月配信していた「荒野に種をまく」の方が実は完成が後だったりしますが、あちらはこのSetagaya〜以前の曲のベストという立ち位置だったので。これは2010年夏に完成してすぐ出した。
おれがこれまで作って来たと自覚しているオリジナルアルバム、というのは案外少なくて、デビュー以降だと2014年の「67年のラブソング」のみ、それ以前だと「夜になりたい」「奇跡」「Setagaya Wandering Education」と、全部合わせても四枚しかないということになります。まあこれはあくまで曲集としての意味合いがないもの、という意味で、条件としては先行シングル曲的なものを除けば全新曲、あるモードのなかでひとつの時期に集中して作ったもの、ということになります。


セタガヤについては語り出すときりがない上にひたすら暗い思い出話をしみじみするという以上のことにならないので、替わりに当時ブログに載せていた、壊れかけのテープレコーダーズ小森さんからのコメントと、畠山健嗣ときょん高橋(aka豚汁)の対談を下の方に掲載させていただきます。おまけとしてそのすぐあと、「荒野に種をまく」と今回配信はありませんが「ロマンチカ10」を聞いてもらったときのものも付けておきます。読み返して超笑いました。




studiorotha.bandcamp.com




当時ブログでSWEPとしてアルバムとの連動企画で書いた文章から、一部をnoteに載せました。今回有料にしましたが、これは、極端な言い方をすればおれとしては積極的にみんなに読んでほしいわけではないけど、読みたい人はいるだろうと思ってのことであるというのと、文章の作品として構えて読んでもらった方がいいと判断したためです。100円という代金を軽く見るわけではないですが、読んでくなら缶コーヒー一本おごってよ、というくらいの。自販機で買って一本飲んで少し座って話すくらいの距離感でもないと本来しない内容の話ということでもあります。
※ちなみに当時のブログからそのまま抜粋したものなので、当時のブログをコピペして携帯とかに保存してる人がもしいたらその内容以上のものはないです、悪しからず。ちょっとした解説のようなものは今回つけました。
note.mu





・・・・・・・・・・・・・・・ここから当時(2010)の内容・・・・・・・・・・・・・・・・






迷いの一切感じられない音楽なんて、僕には信用できない。お前は一体どこに辿り着けたんだ?何を手に入れたというんだ?と、問い正したくなる。単刀直入な「答え」ってやつほど、後に権力に摩り替わるものもない。


よしむらひらくの新作『setagaya wandering education』を聴いて感じられるのは、その完成された高密度な楽曲のセンスや、緻密で繊細なアレンジとは裏腹の、よしむらひらくという一個人の、独白にも似た、くしゃみひとつでその定位置をずらしてしまうような、「迷い」、そのものだった。


夜風に吹かれて 歩いていく道は きっとどこにも続かない今日だけ 僕のためのあたたかな孤独

―「夜風に吹かれて」


卑しくもなるよ 独りで過ごせば 覚えてはいるよ 忘れそになるよ

踏み切りくぐって 走り出すように 言葉を探すよ どこまでもゆくよ

―「漂泊」


諦念と呼ぶには、少なからず希望の兆しさえ垣間見れるこれらの歌の中で、よしむらひらくは一体何処へ向かっているのだろう。決して、他者を拒んでいるのではなく、より他者を愛せるようになるために、いっそうにひとりぼっちになることを望んでいるようにも聞こえる、これらの歌。


どうしようもないくらい崩れ落ちそうな時に思い出したり、耳を傾けたくなるのは、いつだってそういう歌だ。決してこれらの歌は僕らに大それた提言を明示することはないが、その煮えきらず、迷い、歩き出すも踏み留まってしまう弱さこそ、筋道立った解決策なんかよりも、僕らにとっては必要なものなのではないだろうか。弱さを受け入れることに勝る強さは、ない。

タイトルの冠する通りに、正に漂泊するよしむらひらくの歌を聴いていると、僕はいまいる場所が、単なる旅の経過地点に過ぎず、何ひとつ確かなものなんて手に入れてはないことを思い知る。


まだまだ迷い続けるのかと…吐く溜め息は、若干の疲弊を交えながらも、しかし、安堵の一息のようでもある。要は、まだまだ世界は未知数だったと、僕は思い知るのだから。


このアルバムがより多くの、迷いのただ中にいる人達の元に届くことを祈ります。それは決して誰をも救いはしないかもしれない。だけど音楽は救済装置ではない。僕らのこの日常と共にあり、同じように音楽もまた、迷い、漂泊し続けているものだから。そしてそれは、僕らの傍を離れることはないだろう。


よしむらひらく『setagaya wandering education』によせて。



壊れかけのテープレコーダーズ Vo.Gt.小森清




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音楽仲間の中で俺と一番付き合いの長い二人でもある、far franceの畠山(Gt.)と高橋(Drs.)に『Setagaya Wandering Education』を聴いてもらって対談をしてもらいました。それぞれよしむらひらくを対極的な聞き方をしているこの二人でしか出てこない話がどんどん出てきてかなり面白い対談になっていると思います。レコーダーで録ってもらった音源を送ってもらったらそれが40分を越えていてがっかりしました。

8/13にやった即席バンド“よしむらひらくとしあわせのともだち”や去年バンドで作った『ロマンチカ09』、今年の春にロマンチカを抜けていったカメダタク(オワリカラ)などを材料に「あっちのほうがいい」というダメ出しを基調に進む圧倒的に上から目線の親友二人の対談をどうぞ。ちゃんとしたコメントはこれから他の方々が寄せてくださる予定なので安心してください。

でも、この二人の話が奇しくも俺がこれからやろうと考えている音楽の輪郭を探り当てていくことになって驚いた。

                • -


畠山(以下は):聞きました?アルバム。

高橋(以下た):聞きました。もうここ数日はあれしか聞いてないぐらい。

は:ああ、このためにそればっかり聞いてたと。

た:うん。

は:俺、一回通して聞いて、そのあとぱらぱらーと。

た:ふーん。や、俺は普通に曲好きかな。あの、8/15だっけ?

は:14。

た:あの企画のときに“しあわせ”やってたじゃない。

は:あ?しあわせ?ってどんな曲だっけ。

た:あの、一番最後の曲。“story”の前。

は:いま全然思い出せない。まあ、そんな曲もあったような気はするね。

た:おいおいおい(笑)

(注:企画は8/13でした。)

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畠山:あのボーナストラックはなんなの?

高橋:“story”?あれ俺やってた曲だね。俺一回やった。(注:‘10の1月、怪我していた岸田さんのピンチヒッターで高橋がライブで数本演奏。その時だけ“story”を演奏していました)

は:あの人さあ、ボーナストラックってよくつけんじゃん。なんでそこボーナスにするの(笑)

た:いやでも今回俺わかったよ意味。やっぱ“しあわせ”で本編が終わってて。エンドテロップで流れてる曲みたいな。

は:あそうなの。それ本編の終わりじゃだめなの。まあどうでもいいんだけど。

た;それはあいつの考え方って言うか。

は:ああ。や、単にボーナストラックってよくわかんねえなあって思う。

た:まあね。でも、ボーナストラックってずっと言い続けてきて、やっと最近あいつの言うボーナストラックの形にはなってきたと思う。

は:ボーナスってなんだよっていう(笑)まあ別にいいんだけど。

た:なんかやっぱでも“しあわせ”で本編がちゃんと終わってる感じはあるかな。“story”は本編に入ってない感じ。

は:俺ぜんぜんそんなちゃんと聞いてないわ。ぱらぱらーと聞いて「ああいいんじゃない(笑)」

た:(笑)

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畠山:今考えるとすごい『ロマンチカ09』はなんかさ「あっ、ロマンチカな感じ」っていうかさ、人とやってる感じ。実際ベースとかひらくが弾いてる曲もあるんだけど、なんていうか、あいつの表現欲求の源はけっこうポジティブなものじゃなかったり、めんどくさかったりぐじゃぐじゃしてるけどさ、結局それをライブとか、バンドでやったときに、そういうのとは別の次元に移行したりとかさ、人とやることで単純にフィジカルな楽しさを帯びてきたりとかさ、そういうのが『ロマンチカ09』には入ってたと思うんだけど、今回は真逆っていうかさ。

高橋:あれ、今回って演奏自分だよね、ほとんど。

は:岸田さん(Drs.)以外。あとまあカメダくん(Key.)がちょっとやってるのかな。

た:うん。

は:まあ単純に言えば俺は人とやったやつのほうが好きだったかな。

た:おーおー。

は:それは結構音楽の聴き方っていうか、前の『ロマンチカ09』と今回のやつは全然聴き方が違うじゃん。

た:そうかもね。

は:うん。だから今回のは割と「よしむらひらくの文脈」を経て読んだほうが面白い作品ていうかさ。

た:そうだね。それはそうだね。やっぱ俺はそういう見方でいうと、「ああ成長しちゃったなあこいつも(笑)」。あんまりネガティブな意味じゃなくてね。

は:それはどういうこと?

た:あいつの場合は「成長したなあ」っていうと、すごい頑張って成長しようとして成長しちゃった感じが出ちゃうけど、というよりは、単純にロマンチカとかを経て、自分の作品にもそっちの成長が勝手に出てきたみたいな。

は:そっちの成長?

た:単純に曲のアレンジとか根本の発想とかがすごい進化したなとは思う。なんか今までの文脈のデモとかは、なんか「素材一発ぶん投げる」みたいな感じだったのが、割とちゃんと変化球を投げるなり、投げようとする曲なのかとか、もう球じゃなくて「花束を贈ります」みたいな、根本から違うみたいな。

は:ああ。まあある程度聞かせ方は幅を見せてきたというか。ただそういうのを飲み込んだ上で割と「ざっくり」やってるなっていう。

た:そうだね(笑)「ざっくり」やってるね(笑)

は:うん。「ざっくり録って出し」っていうか。うん。…なんかねえ、それはそれでいいんだけど、個人的に好きなのはやっぱ『ロマンチカ09』だったりすんだよね。俺はね。

た:ああ…俺、どうかな…比較しようとあんまり考えてなかったから。

は:俺はすごく対照的に感じる。今回のは聞き方を限定しているような感じにも聞こえる。

た:限定っていうと?

は:だから、「こういう文脈で聞いてください」。彼のモードと、録音の感じ、ミックスとかも含めて。で“story”はそれとはちょっと違うなっていうか。“story”のカメダくん(Key.)がイントロでピロピロ~って弾いてて、遊んでる感じのほうが俺は好きだったりする。なんかさ、よしむらの、よしむらと仲のいい友達とのやり取りを見てたり、実際俺とひらくのやり取りとかを見て思うのは、あいつ、すごい、厄介そうだけど、人が好きじゃん、あの人。

た:そうだね。

は:だからなんかさ、ちょっとしたカメダくんのアクションだったりとかさ、岸田さんの何かに対する反応っていうのがすごいいいんだよね、ひらくって。でなんか、バンドやってるときはそういう感じ。

た:うん。

は:そういうの(カメダくんがピロピロって)に対して「なにこれ!」とか絶対あの人はさ、リアクションとって喜んでると思うんだけど、その感じがあいつの音楽の中にあると俺はすごいいいなって思う。ライブとかもそうだし。カメダくんが抜けた最後のライブ(注:‘10の4/10、甘党祭)とかはそういうライブだったと思う。

た:うん。誰が何やっても楽しそうだったよね。

は:だからやっぱカメダくんが抜けたあとのロマンチカは、そういうのは無いし、

た:ふーん。

は;こないだ(注:8/26のロマンチカライブ)俺見に行って、音はもうすごいいいんだけど、あいつブログにもさ、「ひとりで戦ってる感じがした、バンドのメンバーの姿が見えてこない」と。それ考えすぎじゃないの、と言いつつも、まあ言いたいことはわかるというか。でも結構今回のアルバムはそういう感じだと思う。

た:ふーん。

は:だからよしむらがどういうところを求めてるのかはわからないっちゃあわからない。やっぱり俺はカメダくんみたいな奴がいて、っていうのがいいなあと思う。

た:難しいとこつくね

は:さちさんはそういう存在だけど一人じゃできないし、まあ決して一人では戦ってないんだけど、

た:なるほどねー…

は:まあそれはひらくの意識の問題ってのと…ひらくの意識がどうメンバーに届くかっていうか。どうメンバーに語りかけるかっていう問題だと思う。

た:そこに関しては非常に、難しいね、彼の場合。まあ、なんだかんだ言ってほとんどよしむらとはバンドを一緒にやってないけんじと、なんだかんだ言ってかなり長い間一緒にやってた人間(高橋)…

は:そうだね、俺は近くにいながらバンドはほとんど一緒にやったことがない。まあ二人でやるときはもうなんか、ちょっと違うからさ、バンドじゃないし、何やってもオッケーみたいな風にしてるし(笑)。

た:彼の基本的な人に対しての求め方は、能動的に求めていこうとはしないから。「こうしろよ」とか、「何かをしてほしい」って伝えることではなくて、お互いの独立した趣向(思考?嗜好?)がぶつかりあう瞬間が彼は好きだから(笑)

は:ああー。

た:カメダくんみたいに自分からぽんぽんぽんぽんやってくれる人とだと、波長さえ合えば、うまくいくんだよね。ただ基本的にそういう人間(積極的な人)とは波長が合わないし(笑)。

は:ああー。そうだね。そりゃそうだ。

た:で、あんまりそういうのぽんぽん出さない人には、足りないと感じるタイプの人だから。非常に難しい。

は:それむずかしすぎるよ(笑)それは難しすぎる。

た:だから彼はワンマンバンドに近い形態をいちおう取ってるけど、やっぱりそこでバンドに名前を与えたいってのも意味はすごいわかるし…

は:そうだね。バンドやってない時期はしょっちゅう「バンドやりたい」っていうしね。

た:かといって、「よしむらひらく」っていう名前は絶対失わないんだよね。彼は独立してたいから。自分の趣向(思考?嗜好?)に関しては。まあそれは、いいと思うけどね、ボーカリストとしては(笑)。

は:矛盾とかじゃないとは思う。バンドってそういうもんだって思うし。

                      • -

(たっぷり五分間、話逸れる)

                      • -

畠山:だからなんで『ロマンチカ09』とかの方がいいなって俺が思っちゃうのかって言うと、「俺が思うポップの姿」っていうのは割と『ロマンチカ09』なんだよね。やっぱり結局よしむらひらくは、聴きやすいけど、存在としてはポップではない、っていうのがあるんだよね、俺の中で。

高橋:今回のアルバムなんかは特にそれを…

は:うん、強調しているというか。まあ別に、いいんだけど、なんていうか…あいつの生活も知ってて、新しいアルバムの歌詞とか聴いてて、ちょっと仙人の域みたいなのに達してるとこあるじゃん、なんか、表面上はね、なんか。

た:うん、もうここ一年の歌詞は相当…ねえ(笑)?

は:ぜんぜん俺深読みしてないけどぱっと見てさ…

た:平たく言っても、「重たい」ワードが並んではいるよね。

は:重たいワードを飲み込んだ上で、すごい落ち着いて…

た:そうだね。

は:怖い目つきで誰か睨んで歌ってる感じするっていうか。

た:ずっと前にさ、“バースデイ”かな?「死にたい」っていう歌詞を使いたくなかったんだけど、初めて使える気がしたから使ったっていう話をした気がするんだけど、もうレベルとしてそういう言葉があっさり出てくるって言うか。しかもそのあっさりが、頑張って出したんでも狙ってあっさりやってるんでもなくて、本当にニュートラルな状態で、出てる感じがするというか(笑)。

は:うん。まあそうだね。うん。

た:そこに関してはちょっと、すげえ奴だなあと思わざるを得ないけど(笑)確かにポップではないな、それは(笑)。リアル過ぎるんだよな(笑)。

は:ポップ/ポップじゃないっていうか、そうなるとポップって何かっていう話になるんだけど、いろんな定義の仕方があると思うんだけど一つは、やっぱり人とのふれあい感というか。

た:それはやる側と聴く側とかそういう意味も含めて?それとも…

は:や、別にそういうことじゃなくて、うーん…。とにかく今回のアルバムは曲は聞きやすいけど全体としては聞きやすくねえ、っていうか。別にいいんだけど。

た:確かに「ロマンチカ09」は聞きながら笑えるっていうか、それはなんか、ぶつかった瞬間にエネルギーがパーンと弾けた瞬間みたいなものが明らかにあって。

は:だから表現の根本的な、どういうとこから表現が出てくるかって言ったらたとえば悲しみだったりとか絶望だったりとかしても、『ロマンチカ09』の場合はそれが笑いに変わるっていうか。やっぱそれが盤にも入ってる感じがすんだよね。イメージとして。

た:なるほどね。

は:今回のは、そのままなんだよ(笑)。エンターテインメント化してないっていうか。

た:それはしてないね。俺もそう思う。

は:別に、ひらくはそれでいいと思ってるし、それが悪いとは全然思わないけど、俺はやっぱり…ただまあ“夜風に吹かれて”とかは結構エンターテインメントしてるかなあって思う。それはやっぱり、曲のテーマを離れて無心に気持ちよくなる瞬間があるっていうか。それは音も含めて。

た:非常に音楽家らしい角度から考えたね、それは(笑)。

は:俺はそこで判断してるとこがある。

た:なるほどね。確かにそういう観点からみれば『ロマンチカ09』とは全然違うものだね、それはその通りだと思う。

は:ただ“バースデイ”とかは好きだから、そう考えると、あの曲は…あの曲も微妙だよなあ。エンターテインメントしてんのかなあ。

た:あの曲は、あれだよ、なんだろかな…

は:いや、俺の考え方の流れで言えば別にエンターテインメントではないと思うんだけど。でもね、あいつのそういう曲って結構さあ、長く聴いてるとよくなってくるのが多い気がする。

た:うん、そうだね。てか一回目に聴いたときよくわかんねえのが多い。

は:そう。今回のアルバムも割とそういう感じ。

た:それに対して『ロマンチカ09』はもうファースト(インプレッション)で来るんだよね、パーンと。それはバンドとしての熱量だと思うし、ただ、うん、難しいよそれは(笑)。

は:ただ、今回のアルバムの曲をライブでやって、こないだ(8/26ロマンチカ)一曲目“夜風に吹かれて”だったんだよ確か。

た:その感じはどうだったの。

は:やっぱり、『ロマンチカ09』の流れのような感じがすんの、ライブは。ただ、やっぱりカメダくんがいる時に比べると、足りてない。それはやっぱりメンバー間の投げかけあいみたいなものが足りないっていうか。






高橋(以下た):岸田さんとカメダくんに共通して言えるのは、もうどっちも本能的にパッて聞いてパッて出来る人。

畠山(以下は):そうだね。

た:つまり彼(よしむら)は、音楽的にわかってる人っていうものは見抜く力もあるし、そういう人とやってて楽しいっていう感覚はあるんだけど、会話とかコミュニケーションを通じて「そういうもの」を育てる能力に関しては、すごいもう、欠け過ぎてるっていうか。そういうものってさ、もともと一発でバーンてできるタイプの人もいるけど、一緒に作ってって、がっちり生まれてくる人もいる。

は:ああ。うーん。でもそれを彼は求めてる気はしない。

た:そうだよね。そもそも求めてないから、でもどうなんだろう。これから長いこと続けていくとしたら必要な能力だと思う。

は:うーん。まあ売れちゃえば関係ねえんじゃねえの(笑)。

た:いやでもやっぱすごいうまい人でもさ、感覚的なニュアンスの問題って、誤差は生まれてくると思うんだよね。

は:それってはっきり言っちゃえばさ、損得の問題でしょ。

た:彼にとって?

は:彼にとっての損得の問題じゃん。そういうところは、あいつの意識外な気がする。

た:ああ~。損得の問題(笑)。

は:損得の問題っていうか、「いやそれってクールじゃないでしょ」みたいな、たとえばさ(笑)。そう思うかは知らないけど。

た:ただやっぱり今の、その「バンド感が足りなくってくる」っていう状態をなんとなく想像して思うのは、やっぱりカメダくんていうのは、すごくバンドっていうものにおける自分の役割みたいなものを、結構普段から考えてる人だから、一発でそれがスッとできちゃう人間だと思う。

は:…なんか、直感的に思ったのは、「どこでも寝られる」っていうカメダくんの性質とリンクする気がするね。

た:(笑)…でも生き方からしてそういう人だと思うんだよね。で俺はそれをどっちかっつったら意識的にやってかないとできない人間だと思う。でよしむらは、ポイントの探り方っていうのは、うまくはないかなあ~と思うけど、まあそれがよしむらひらくらしいなあって言ってしまえばそれまでだからな(笑)。

は:あんまり「うまい/へた」っていう問題でもないと思うんだけどなあ。

た:あほんとに?

は:だって、「うまい/へた」っていうのはうまくなろうとしてる人の意見ていうか。

た:ああ(笑)。そういうことか。そういう意味で言えばそうだね(笑)。

は:そう、だって(よしむらは)うまくなろうとしてる気がしないからさ。

た:でもそれってどうなの。

は:いや…別に俺はそういうやり方はアリだと思う。だから、それはやっぱり損得の問題だと思うんだよ。

た:もったいないって思っちゃうなあ、やっぱなあ。

は:「それはクールじゃない」って切り捨てるんだったら、アリっていうか。

た:ああー。なるほどね。そう言われると納得はできるなあ。

は:だって彼は今までそうやって生きてきたでしょ。so○yの大人とうまくいかずに…

た:(笑)

は:そういう話でしょ。

                    • -

畠山:だから結局なんか、売れたいんだろうけどそこに一直線で行こうとしてるようには全く思えなくなってきたかな。

高橋:ああ。まったくそうではないね。確かにね。

は:…そう考えるとあいつは今音楽で何をしようとしてるのか謎といえば謎だね。

た:ああ~そうか…うーん。彼はそういうことばっかり考えて毎日生きてるからね。

は:うん。なんていうのかな、たとえば今回のアルバムはすごいリアルな感じはするけどさ、あの…もちろんその先に何かがあるからそれをやるわけじゃん。だから結局俺が『ロマンチカ09』のほうがいいなとか言ったところで、彼が行こうとしてるその先が全然違うわけだからしょうがないんだよ。…っていう結論に今俺達した。

た:うん。だからやっぱバンドマンだよ、君は。完全な。

は:そうだね。

た:よしむらはバンドマンじゃないからね。バンドマンに憧れてるシンガーソングライターだから彼は。俺の評価はずっとそれだな。

は:ああーでもどうなんだろうね、そこで、じゃあ「ライブと盤は違うの」とかさ。まあなんか、こないだのライブ(8/26ロマンチカ)が、「一人で戦ってる感じがする」とか言ってたけど、やっぱりバンド感はまあある程度はあるわけよ。で彼もライブにおいてはたぶんそのバンド感みたいなものを求めてるわけだろうけど。でも盤はそうじゃないっていうことなのかな。どうなんだろうね。

た:うーん…

は:やっぱりバンドと溶け合うで出てくるポップ性みたいなものがあると思うんだよね。

た:じゃあ、一人で作った意義について、どう思うのか、っていうことか。

は:ああ。「一人で作った今回のアルバムは、まあ、なかなか殺伐としてますなあ(笑)」

た:でも昔のよしむらの曲に比べればかなり、それでも軽やかさは、増したと思うけどね。

は:…どうかね(笑)いや、わかんねえ。

た:俺はやっぱり岸田さんていう精神力がひとつ入っただけでかなり、違って聞こえるんだけどね。

は:ああ、それはね。ほんとに一人で作ってるわけじゃないし。

た:あれだけ精神力が、大きな人が入ってるとこんなに聞こえ方が違うんだなあとは思う。…でも、たしかにね、『ロマンチカ09』は、テイストとしてさ、「ロックバンド」だと、俺は思いたいんだけど。『ロマンチカ09』はロックだ、って仮に、すごい単純なカテゴライズをするとしたときに、今回のアルバムはさ、どっちかっつったらポップとかフォークとかのが近いとは思うんだけど、遥かにこっち(SWE)のほうがヒリヒリしてる。

は:ああ。いやでもフォークって基本的にそういうもんでしょ。個人主義というか。

た:まあね。ただまあ、リアルタイムじゃないからねえ、我々は…よくそこに、なぜ到達するのかとは思うけど。

は:いやまあいつの時代にもそういうものは存在してますよ。それは別にフォークっていう形態を取らなくてもね。

た:でもさあ、彼の場合どの文脈から、どうしてこっち来たのかがわからないんだよね(笑)。

は:それは最初からそうでしょ。音楽的な文脈を辿っても、あの人はわからない。なんでこういうもの聴いてきてそうなるのかっていうのがやっぱわからない。

た:わからないね。あの人はやっぱ小説の延長で音楽やってる気がするからなあ。

は:うん、で、それってなんでなのって(よしむらに)一回聞いたら、「いや、工夫してるからでしょ」(笑)ってね、言ってたけど。(注:本人記憶なし)

た:ああ~。それはそうかもね。

は:工夫でそれができんだったら立派なもんですよ。

た:そういう点においてはすげー進化してると思うよ。やっと、「音楽」っていうものをちゃんと使えるようになってきた。「言葉」しか昔は使えてない気がしてたけど(笑)。

は:あそう?いや俺は最初から音楽使えてると思うけど。

た:俺最初の頃の曲よりは今の曲のほうが全然好きかな。

は:「音楽」してなかったら俺ひっかかんないから。

た:(笑)いや音楽してたけどね。

は:言葉だけだったらやっぱり俺はひっからない。それなんだよね。結局俺は。うん。…だから今回は、音楽としてひっかかるポイントはちょっと少ないかなって気はする。

                              • -


畠山:「そこの言葉(歌詞)そこで切る?」とかも結構あるなあ。

高橋:ああ…彼はたぶん、無意識的に入ったブレスとかをもし録音しちゃったとしたら、それを尊重する気はするけどね。音楽的にそこのブレスの位置おかしいとかあっても、もっと素で出てきたブレス(テイク)を尊重しそうな気がする。

は:あとあの、“it`s love!!!!”(『ロマンチカ09』収録)でさ、「そんなうれ、しそうな(そんな嬉しそうな)」とかも最初かなりしっくりこなかったからね。「そんなうれ」ってなんだろなあとかって思ってた。「うれ、思想」?(笑)

た:いやいやいや…そんなこと言ったらちょっと前の“かがやき”とかめちゃくちゃだからね。歌詞。

は:そういうのって「そういう追い方」しないといけないじゃん。それが「言葉の意味から解き放たれて無心に楽しくなってくる」みたいのを遠ざけるような瞬間はあるなあと思う。逆にそういうのがしっくり来てると、文脈として聞こえなくてもその瞬間にそのフレーズがくることだけでグッとくるみたいなさ。カシマさん(CLUB GOODMAN/bossston cruising maniaなど)とラップの話しててさ、「カシマさん、あんまり何言ってんのかちょっとわかんないんですけど」みたいなことを俺が言ったときに、「いや、全部わかんなくてもいいと思う」「だって洋楽とか聴いててもそうじゃん」みたいなこと言われて。確かに「ああ、そうだな」って。瞬間瞬間で。だからたとえば“さつき”(『ロマンチカ09』収録)で、「♪やさしい~か~ぜ~が~」(注:正しくは涼しい風)ってそこだけ聞こえて、それでグッときましたとかね。それでいいっていうか。

た:うん。

は:あれだな。「よしむらひらく的文脈」を残しつつ、その文脈から解き放たれて、無心に楽しめる瞬間があるともっといいんじゃない。

た:そういう意味で今回のアルバムはまさに、その文脈の中で展開されてるアルバム。

は:そう。それだけだと俺には物足りないな。

た:ああそうか…俺ね、あいつの、「あいつの小説的世界観」て全然嫌いじゃないから…

は:いや嫌いじゃないけど、俺はやっぱりそれだけを求めてるわけじゃないって感じだな。うん。それがバンドでやることで解き放たれる感じが俺はすごいする。

た:うん。今回のアルバム、岸田さんのドラムにしても、まだそれほど練ってない曲も結構あると思うんだよ。ドラムのアレンジとかまだ。なんか、俺の聴いたときのこのアルバムの楽しみ方のイメージは、「ここからどう発展していくのか」っていうかな、ってなんとなく思ったの。これまだバンドでたぶんそんなにガンガンやってない曲が多いだろうって思ったし、『ロマンチカ09』は逆にもう先にバンドで(ライブで)やってた曲を録ったんだよね。そうじゃなくて今度は、次の一歩のための、曲が先にあって、そこをロマンチカが広げていくのかな、みたいな感覚で…。

は:ああ。まあ、そう考えれば、いいんだけどね。

た:今回は、やっぱ「よしむらひらくのソロ」だし、これをロマンチカでやる前提で考えてる曲も何曲かあるはずだし、どうなってくのかがわかんない。次のロマンチカのバンドでの録音の時にまた(SWEから)何曲か入るかもしんないし、入んないかもしんない。

は:そうだね。まあじゃあ俺は、次は『ロマンチカ10』を期待、って感じですかね。次の作品は。

た:(笑)…まあ君(畠山)らしいと思うな、俺逆に、彼(よしむら)やっぱり歌詞から好きになってる人間だから、そういう人間からすると…

は:なんかさ、そういう聞き方をするのもひとつなんだけど、やっぱそれだけじゃもったいないんだよね。

た:なるほどね。

は:だから彼の魅力はそれだけじゃない。

た:どの曲好き?

は:今回の?今回はでも、“夜風に吹かれて”一番いいかな。あの、二番のアタマのさ、なんだっけ「電話切ったあとほんとは一人で散歩に出た」っていうのあんじゃん。その「散歩に出た」の言い方がいい。

た:(笑)

は:とかそういう感じだから(笑)。俺の聞き方は。

た:ああ~(笑)違うね、だいぶ。聞き方が。ずいぶん違うわ。…2曲目…

は:そろそろ時間っすよ。

た:あ、そうだね。

は:じゃあこんなとこにしときましょうか。充分しゃべったでしょ(笑)

た:(笑)

は:これ文字起こしすんの大変だよ。37分もしゃべってんじゃん。

た:あ俺、“春の呼吸”は好きだよ、すごい。

は:ああ“春の呼吸”いいね。

た:あと、“the ballad”は、ちょっとびっくりした。「あらら~。いい曲書いたなあ」って。あのねえ、思ったのが、歌のテンションが上がってかない曲が多いんだよ。サビに行くに連れて。それがちょっとすごいなと思った。


(席を立つ)

畠山:まだ(レコーダー)回してんの(笑)。

高橋:俺がたまに言うじゃん、緊張感のある音ってやっぱ最高音(キー)を上げてった方がいいみたいな話をたまにするじゃん。

は:ああー、うん。

た:よしむらの歌が今回、それと真逆に進行するものが多くて、それはバンドじゃできない進行なんだよね…

は:ああでもあいつバンドでやってもさ、あいつ結構低い声をでかい声で歌えるからさ、まあ大丈夫なんだよね。

た:出せる出せる。うん、音程の話もそうなんだけど、完全に、テンションが、サビの方が落ち着いてるというか。そこまで歩いてたのがサビで立ち止まってるぐらいの感覚になる曲。

は:ああ。まあ“春の呼吸”とかもそうだよね。

た:そうそう。これが確かにバンドだと、やるのが難しいよね。うちのバンド(far france)とだから比較しちゃったんだよ、うちは絶対サビで、俺がシンバルバコバコ打つし、英(Vo.)の音程がどんどん上がっていくし、みんなで合唱しちゃう。そうならないってのはやっぱ、「作曲する人の強み」だと思うんだよね。

は:まあ作り方もあるわ、そりゃ。…作り方もあるし、行き着く先も違うし。

た:その落ち着き方が、もうちょっと「怖い」の次元なんだよ、俺からすると(笑)。「お前何歳だよ」みたいな(笑)。

は:確かに。oono yuukiさんも「年上だと思ってたら全然年下でびっくりしました」みたいに言ってたしね。

た:うん(笑)。わかるもん。

は:…そういう聞き方で捉えるとさ、初めて聞いた人がこう、心をグッと掴まれるかどうかってさ、難しいんだよね。

た:あぁ~。難しいねえ。そこに関して言えば君がさっきから言ってる感じの、「よしむらは別にそれを求めてない」

は:まあそうだね、そうなる。だからそのループになるんだけど。

た:だからやっぱ(SWEは)、ロマンチカからは逸れてると思うけど、「ロマンチカも含めての彼の文脈」からは逸れてないと思う。アルバムとしてはね。その延長線上にもしかしたら交錯するポイントがあるかもしんないし、交錯しないまんま、ひらくとロマンチカっていうものがどんどん離れていく可能性もある。

は:うん。でもまあ、離れてくってことはないと思うんだよね。

た:わかんないじゃん(笑)。

は:いや、だったら、やってる意味がよくわかんないじゃん(笑)。

た:確かに(笑)、あいつ、やらないね、そしたら。…じゃあまあ、そしたら『ロマンチカ10』を楽しみにしてるってことですかね。

は:そうだね。『ロマンチカ10』に期待ですな。

た:なんかそうすると二部構成的な雰囲気になるかもね。これ(SWE)を聴いた上での『ロマンチカ10』っていうものが、意味を持ってくる可能性があるかも。

は:確かに。

た:いいこと言ったな。

は:確かに。確かにって言ったけど今全然きいてなかった。ボーっとしてました。

た:おおい(笑)。じゃあ、リハ行ってきまーす。



(終)




・・・・・・・・・・・・・・・ここまで当時の内容・・・・・・・・・・・・・・・・









■おまけ
再配信としては先月でしたが時系列としては上の対談のあとに同じ二人にやってもらった対談『ロマンチカ10』『アーリーデイズ‘04~‘08“荒野に種をまく”』編も面白かったので載せさせてもらいます。


・・・・・・・・・・・・・・・ここから当時の内容・・・・・・・・・・・・・・・・


高校時代からの貴重な音楽仲間、現在レギュラーメンバーではないけどずっと近くにいる二人、far franceのはたけやまけんじときょん高橋(a.k.a.高橋豚汁)に、『ロマンチカ10』『アーリーデイズ‘04~‘08“荒野に種をまく”』の二枚を聴いてもらって、また対談してもらいました。前回、『setagaya wandering education』の時に続いて今回も緩いことこの上ないですが、やはり核心をついた話をしていると思います。相変わらず遠慮も無いし二人を知らない人にはわかりづらいところもあるかもしれませんが、辛口の昔なじみの与太話を覗き見しているつもりで、是非ご一読あれ!けんじ&きょん、ありがとう!

気になった方は前回のもどうぞ。

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畠山健嗣(以下けんじ):2004年から2008年てことはさ、高校2年生ってことか。

きょん高橋(以下きょん):「秋風」とかじゃん。あ、「キンモクセイ」とかか。出した順に並べんのかと思ったら違ったからびっくりした(笑)ちゃんとアルバムとしての曲順を考えたって事かな。


けんじ:アルバムとしての曲順を考えてるようにはあんま聞こえなかったけどな(笑)。特に悪い意味でもなんでもないけど。

きょん:「そこでこれか(笑)」っていう流れではあったな確かに。

けんじ:やっぱ「キンモクセイ」(‘04)とか今聞くとちょっとなんか違和感あるもんな。

きょん:それはどういう…

けんじ:いまのよしむらが歌うとなんか。

きょん:ああ今のよしむらが歌うとってことね。単純にいい曲だなと思ったけどね。この頃はもうちょっと素直だったんだろうなとか思った(笑)

けんじ:まぁそれはわかんないですけど。

きょん:そんなことねえか(笑)。この頃のほうがひねくれてるかもしんない。

けんじ:なんかさあ、「もうすぐ冬がくる」とかすごいじゃん。

きょん:懐かしいなあ。超懐かしいって思った(笑)

けんじ:クリスマスを待ち望む子供みてえじゃん。気持ちとしては。もちろんそういう気持ちはあるだろうけど口にださなそうな感じっていうかね。

きょん:それはそうだねえ。…どういう順番で話していけばいいのかね。

けんじ:『ロマンチカ10』のほうがまあ話しやすいんじゃないすか?

きょん:ああ、聞いてどうでした?

けんじ:あっさりしててよかったんじゃないすか。ただなんか、前の対談の時(2010年夏)に俺が(『setagaya wandering education』よりも)『ロマンチカ09』のほうが好きだみたいなことを言いながら、今のモードとしては『setagaya wandering education』のほうが好きな気がする(笑)ってこれを聞いて思ったね。あれときどき聞くと「ああいいなあ」って思うんだよね。重い感じはするんだけど、今は違和感無く聞ける。

きょん:ああ。違和感なくってのは今のよしむらひらくを知ってる人間としてってこと?

けんじ:まあもちろんそういう目線であいつのこと見てるからそりゃそういうことになるけど。最近のよしむらくんの話を聞いてると大体さ、「俺が言いたいことは別に伝わんねえんだ」みたいなさ、

きょん:まあずっとそうだよね。

けんじ:でもなんかそこでもがくんじゃなくて、もうこっちは求められたらはいどうぞって素直にやることで、側面的にでも自分が評価されたらまあよしとしようみたいな話をしてたんだけど。

きょん:ん~。まあ前までは「どうやったら伝わるか」ってことに命をかけてたからね(笑)。

けんじ:そういう意味では旧曲ベスト盤とか「変だなあ」って思ったけどね(笑)。今聞くと。

きょん:よしむらのブログの「旧曲ベスト盤によせて」みたいなのは読んだ?もったいないけど録るのめんどくさいな~売っちゃおうかな~みたいなの(笑)。

けんじ:「金に困ってる」っつてたからね。昨日もさあ、ファミレスに行って、「ガスト代が払えない」って。よしむらくん。

きょん:同じ同じ同じ(笑)。そうそうそう。俺もひらくもどっちもアホだからさ、突っ立ってれば誰かお金くれるんじゃないかって思ってるから(笑)。

けんじ:まあ俺が金づるとして、

きょん:それは冗談として、金はないよね、当然。まあお互いむちゃくちゃやってきたので、そろそろお金がどうにもならなくなってきた歳です。



けんじ:まあそんなに、これ(旧曲ベスト盤)を作ったことで、そこまでの(込めた)意味はないよね、たぶん彼は。

きょん:意味はないんじゃん。別に。ただなんていうか…巷では「よしむら君この先どうなっちゃうのかしら」っていう噂が渦巻いてるけど、彼は彼なりに前進するような感じもあるので、その前に過去の整理はちゃんとしておきたいっていう意味だったらまあよしむらひらくらしいなあ、と俺は思ったけど。ただまあ昔の曲はやっぱり、(旧曲ベスト盤で)2曲「スピッツ(‘05)」と「overeture(‘06)」叩かせてもらったんですけど、アレンジに無茶があるよなっていう(笑)

けんじ:そんな別に思わなかったけどね。まあ「スピッツ」とかはちょっと、ね。

きょん:「overture」は、まあ、ね(笑)。リズムをどこに置いて良いかわかんなかった時代なんだよね、この頃。今はちゃんと曲にリズムもあるし、アレンジでちゃんと中だるみもしないからやりやすいけど。ってこれどんどん旧曲ベストの話いっちゃってるけど。

けんじ:いいんじゃないすか別に。「秋風(‘04)」とか今聞くと結構ちっちゃく戦ってる感じがなんかいいなあと思った。

きょん:「秋風」は確かにかわいかったね、久々に聞いたら。俺がすげー昔によしむらにもらった音源とか聞いたら…『阿漕ヶ浦』(‘05くらい。出荷枚数30枚くらい。)だっけ、『802、2才』(同じく‘05くらい。出荷枚数もおなじくらい。友達に配っただけ)とか…あ、違う、何に入ってんだっけ。『そのいち』(‘06.後出)かな。もともと五分半あったんだよねこの曲。

けんじ:今思えば戦い方がかわいい感じ。…なんか今の彼が何を言っても、俺のフィルターを通すと相当不穏なというか、何を考えてんだこいつはみたいな目線で見ちゃうから、そこでさらにこの旧曲ベスト盤がくるとなんか、ますますこいつは意味がわからんていう(笑)。まあそれに対して『ロマンチカ10』の方はまあなんつうかわかりやすいっていうか…わかりやすい諦め感みたいなのを感じ易いから、

きょん:諦め感。ああそれは、もうちょっと伝わりやすい形になったとかそういう意味で?

けんじ:それもね。ただ結果として俺みたいな人からするとそれがわかりやすいのかどうかもうよくわからんていうか(笑)

きょん:「こうしたら伝わるんでしょ」みたいなそういうこと(笑)?

けんじ:それはあまり言い方がよくない感じがするね(笑)。まあそんなようなところもあると思うけど。

きょん:すごくよかったけどねえ。確かに今までの作品の「重さ」とは全然違うものだったからそういう意味でびっくりしたかな。え、どっちも重くない?

けんじ:重くはない。うん。どっちも、『ロマンチカ10』だってさ、作品と言うよりは記録っていう感じだからさ。

きょん:そうだね、記録だね。まあ一発録りだっていうのは聞いてたから、ああまた音がすげえのかなあと思ったら、音も割とさっぱりしてて、レコーディングほどもしっかりしてないし、「無茶苦茶な一発録り感」ってわけでもないから。ほどよく聞きやすいところを突いてきたなあと思った。ただ、今まで(の作品)がどっかいびつな録り方とか、雰囲気を何らかの方法で出してきてたから、そこと差は感じたかな。「あ、今回はシンプルにきたなあ」みたいな。時間が無かったのもあんのかな。

けんじ:うん。俺はそのシンプルさに変な違和感を感じなくもない。

きょん:違和感ていうか、今までが過剰な部分がすごい多かったから、それが無さすぎて俺はびっくりしたな。…なんか曲ごとにありますか。一曲目「夜風に吹かれて」…

けんじ:俺相当好きだけどね、「夜風に吹かれて」。

きょん:意外と明るくてきれいな曲なんだけど、歌詞が好きだな。

けんじ:ブルースに近い感じがするよね。や、ブルースなのかな。持ってるテーマは重たかったりするんだけど、バンドサウンドになった瞬間に、どっかそれを笑い飛ばすような感じがあるっていうか。この曲はそういう意味ですごい好き。

きょん:曲にすることで熱量は持ってるよね、ちゃんと。バンドとしての熱量はちゃんとあるなあって思う曲だな。ブルースねえ。

けんじ:あ、よしむらはブルースなんだ、って今、自分で言って思った。

きょん:「イッツラブ」は二番のアレンジめっちゃかわってる。

けんじ:「痛みは嫌だよ~」とかのとこ?

きょん:「ズダズダズダズダ」(笑)で、「春の呼吸」「untouchable」か。今回は完全に新曲っていうのは「狐の嫁入り」だけだよね。知ってる曲が多かったから、それで耳にスッと入りすぎたのかな。「春の呼吸」すごいよかったと思う。やっぱ俺はこの曲、バンドで、いいなあと思うなあ。



けんじ:バンドマジックとか、そういう話ではもはや無い、っていう感じはするけどね。こういう話をするときに割と「つっこみづらい」ような作品になってると思う。俺とかがいちいち引っかかって言及するためにある、そういう作品じゃないっていうか。「作品感」は少ないというか。それが悪いっていうことでもないんだけど。

きょん:やっぱ今の編成のライブで核となってる曲を記録した、っていう感じ。

けんじ:スタジオで時間が余ったから一時間半で全部録ったらしいからね。つってたよ昨日。

きょん:すごいね。そういうとなんかもうめちゃくちゃこの人たち演奏うめえなと思っちゃうな(笑)

けんじ:ドラム(のマイキング)とかバスドラ一本とエアー二本だけっつってたからね。

きょん:それ考えるとすげえな(笑)。とんでもねえわ(笑)

けんじ:最近のよしむらの発する妙な重さとラディカルさと、なんかそれをうらっかえしにしたような、一瞬ポジティブに見える、みたいな側面がこれからどうなっていくのか、結構おもしろい気はする。…まあ別になんかさ、俺がこうがーがー言うことは大切であり、同時にどうでもいいっていうのがどんどん明確になってって、それはいいなと。そういうとこに達してしまえば俺は何も言うことがない。

きょん:なんか言って下さいよ(笑)。せっかく対談してんのになんか言わないとだめでしょ(笑)

けんじ:今回あまり、もう何も思いつかない。言うことが(笑)

きょん:そういう意味では、俺やっぱりよしむらの作品とか生き方とか見てると、すごいいびつな多角形だと思うんだけど…あのなに、「一日に必要な栄養素」って八角形とかあんじゃん。あれでいうとビタミンAだけものすごい出ちゃってるみたいな。そういう人のような気がするんだけど(笑)

けんじ:「車の運転に適しているか」っていうので俺がむちゃくちゃだったっていう、

きょん:そうそう(笑)。で一個だけ測定不能みたいな値まであるんだけど、ふつうの人が持ってるようなところが全部最低評価とかそういう人間だし、そういう作品が多かった気がするんだけど(笑)、今回ちゃんとバランスが取れてるんだよね。

けんじ:もはや俺はこれをふつうの人がどういう風に聴くのかよくわからない。

きょん:確かにね。受け取りようによってはさらっと聞き流して終わりにできる。でもまあ言うなればそれはふつう求められる音楽のあり方だから悪いことじゃない。

けんじ:まあもちろん。

きょん:でもまあその奥っかわを今までを知ってる人間からするとびっくりしたけどね、ちょっとね(笑)

けんじ:うん。まあその、旧曲ベスト盤でなんで古い曲を引っ張り出すのかっていうね。単純にこれはこれで久々に聞く曲が多いから面白いよね。「あっこんな曲あったね」とか(笑)。今聞くとちょっとかわいくていいね、とかね。

きょん:「甘い生活」(’08)と「キンモクセイ」はびっくりした(笑)

けんじ:「リリィときらめく世界」(‘07)とかさ、あの「死んでたよしむらのデモ三部作」(‘07に三枚連続で作ったひたすら暗いデモの呼称)

きょん:死んでた言うなよ。

けんじ:録音のものとしてはやっぱり俺最近のものの方が全然好きだからな。それか『そのいち』(‘06、高校卒業直前に作った18曲入りのデモ)とかの、あの…

きょん:ダメな頃(笑)?

けんじ:ダメっていうか(笑)、あれはあれで好きだった。「リリィ」とかはほんとあの、(今回の旧曲ベスト盤では)当時の重たさが全然なくて。良くも悪くもね。…昔の曲のほうがさ、曲のメロディーの骨格とかは割とわかりやすいんだなと思ったな。

きょん:昔はわかりやすかったと思うよ、すごく。どんどん、その、うち(far france)とかさ、こういう音楽をちょっとずつ聞き始めて、音楽的に彼の中で刺激を受けて深まって、ちょっと独特な彼の、リズムの取り方とかさ、拍子の取り方とか小節の取り方とか、どんどん複雑になってった感じはするけど。メロディーとかも前はシンプルなのが多かった気がする。

けんじ:うん。逆にやっぱり今これ(昔の曲)を聞いてもちょっと変な感じにはなるな、とは思ったけどね。非常に。

きょん:それはわかんなくもないな。こんなかで今聞いてすっと入ってきたのは、俺「荒野に種をまく」(‘08)はすごい好きな曲だから、入ってきたけど、あ、「お天気タワー」(‘07)はたまに弾き語りでもやってるから、みたいな感じでなんとなくわかったけど、

けんじ:「お天気タワー」はまだ、ぜんぜん、(今に)続いてる感じはある。

きょん:「リリィ~」とか「バースデイ」(‘07)がすごく軽やかになってたのがびっくりしたかなあ。

けんじ:結構「バースデイ」は変な曲だよね。

きょん:変な曲だね。「バースデイ」もやっぱり岸田さんのドラムだとすごい活き活きとした曲になって(笑)、前のデモのときの「バースデイ」は聞くのにちょっと勇気がいる(笑)。

けんじ:ああ。割と俺はそういう、ちょっとひりひりするくらいが一番高揚するから、ちょうどいい。

きょん:高揚するけどさ、エネルギー使うじゃん。

けんじ:ああ俺たぶん普段聞いてるのがそういう音楽ばっかりだから。

きょん:…だからまあ、すごいライトになったなあとは思った。それが彼の心境の変化なのか、

けんじ:いや覚悟みたいなものがちょっと違うんだと思うんだよな。ていうかまあそれは俺が昨日よしむらと色々話してるからそう感じるのかな。



きょん:ここまで来てね、彼に対して思ったことはね、何もよしむらに対して確定的なことを言うのはやめようという(笑)。もうね、正直こっちの想像を上回ることしかやってこないからわかんない、上回ってんのか横回ってんのか下回ってんのかわかんないけど、想像通りの路線には絶対来ないからわかんないっす(笑)

けんじ:なるほどね。

きょん:こんだけポップなことやっといて、次に出すやつがまたもう「お前どうしたの」ってぐらい、卓袱台ひっくり返したみたいな音源作ってくる可能性だってあるし、それはそれでちゃんと理解できちゃうから不思議だけどねえ…

けんじ:まあなんかあの、今あいつに何かを言う気にならないというか(笑)、言えないというか。全部一直線に繋がってる感じはまったくしないっていう…それが良いとか悪いとかじゃなく、うーん。まあなんか、色々あっておもしれえ奴だなっていう…

きょん:すごいとは思うよ。この先ね、どうなんのかはやっぱり想像がつかないなあ。…そうだ、俺旧曲ベストで2曲叩いたんですけど、なんかないすか(笑)

けんじ:ああ。なるほど。「スピッツ」と「overture」。

きょん:「overture」はねえ…(笑)

けんじ:いや「overture」よかったよ。さっき聞いてた。

きょん:あほんとに?やもうちょっと練習したほうがよかったかなと思いながらねえ…(笑)

けんじ:いや、たぶん練習しないほうがいいすねあれは。「overture」は、あのスピード感によしむらの歌よりもドラムが合ってる感じはしたけどね。ドラムは活き活きしてるっていうか。まあでも、(ライブで)やらないでしょ。今。

きょん:曲としてめちゃくちゃだからねえ、結構ねえ。

けんじ:いや曲としてっていうか、やっぱりなんか今のよしむらがやってもちょっと変な感じがするな。

きょん:「今の」がつかなくても変だよ(笑)。

けんじ:いや当時だったらわかる。高校三年生だったらわかる。

きょん:俺当時一緒にやってたけど、「めちゃくちゃだなあ」と思いながらやってたよ(笑)

けんじ:いやそういうめちゃくちゃさは別にいいじゃん。…そうやってアイポッド無駄にくるくる回して電池減らすのやめてくんない?

きょん:そのアイポッドよしむらからもらったやつだろ(笑)。

けんじ:あそうだね(笑)。忘れてた。完全に自分のものとして使ってるけど(笑)。

きょん:…まあでも要は、この二つの音源聞いて俺とけんじがなんも言うことないのは多分曲がさ、既出のものだからなんだよね。ほとんど。

けんじ:どうかね?まあもちろんそれもあるし、

きょん:音の関係でいうとさ、なんかさっぱりしちゃった。前のいびつな感じがやっぱり二人とも好きではあるから、そういう意味ではちょっと残念なんだよ、正直に言えば。

けんじ:やでもなんか、俺はよしむらがいびつなことやると「もっとすっきりしてたほうが」って言って、すっきりしたの出すと「いやもっと」(笑)

きょん:俺もそう思う(笑)

けんじ:ちょっとなんかもう、あたしには評価できません、っていうことな気はするけどね(笑)

きょん:(笑)…いやよかったと思うけどね、軽いほうがやっぱ聞きやすいし、「軽い」っていうのが悪い意味じゃなくてね。…「やっとこういう音にしたんだ」って思いつつ、前の感じをどっか懐かしむ感じもありつつ、これが彼の狙い通りなのか狙ってないのか…それにしてもやっぱり曲がよくて歌がいいなって思えるんだからそれはすげえことだなあと思うわ。音とか雰囲気だけでごまかしてるのとは違うなあって、やっぱり思うなあ、それは。これだったら俺は車の中でユーミンの次によしむらひらく聞こうかなあって気持ちになるよ(笑)

けんじ:うんなるほどね。…最近よしむらが、弾き語りのライブがすこぶる調子良いらしくてさ、こないだゴガさん(GOGATECH/オウルライツ)が(よしむらの)弾き語り超よかった~つっててさ…で、たぶんそれとは対極にあるものだよね、今回の二つの音源は。恐らく。

きょん:弾き語りと?そうだね。

けんじ:そういう意味で言うと、まあ俺の聞き方だけど、実はよしむらすごいエンターテイナーだったかも~、みたいな、割とこう、振り回してもらってるというか。実は。

きょん:なるほどね(笑)。そうかもね。

けんじ:さりげなくエンターテイナーだったかもしれん。「俺には音楽的な才能はなかった」みたいなことを最近よしむらがよく言っててさ、まあなんか言いたいことはわかるんだけど、君が言うその才能っていうのとはまた違った才能はあったというかね。確かに洋服とかオシャレじゃないし~、とか洋楽とか聞いてないし~とかね。それでよかったんじゃないかと。

きょん:まあ、それは間違いないでしょう。きっと。

けんじ:ファッションにならない感じがね。

きょん:というかファッションとはもう無縁のものだよね。

けんじ:インディーズの音楽とかを割とファッションとして聞いてるようなところあるじゃないですか。音楽を聞くっていうかファッションとして身につける、っていうのとはやっぱり結びつかない感じだね。

きょん:こいつには「独立してる」って言葉が一番似合う、

けんじ:かといって「どアングラ」っていう感じでもまったく無いっていう。…なんかはっきり言えることがあんまなくてちょっと残念だな。もっとなんか、「すげーいい」とか「違うよね」とか言いたいんだが。



けんじ:二年半くらい前に俺とよしむらが二人でやったライブ録音をこないだ聞いたら結構よかったんだよな…

きょん:お前がビショビショのギター弾いてるやつ?

けんじ:そんなビショビショじゃなかった、意外と。意外とディストーションが薄めだった。

きょん:ああ、そういえばビショビショ感なかったね、今回の音源ね。

けんじ:いや今のメンバーはビショビショ感ないでしょ。

きょん:そうか。いや今回ドラムの録り方さ、シンバルがビショビショなんない録り方だったんだよね。もう俺、よしむらのドラムの音っつったらシンバルがビショビショの音だったからな。今回ドラムの音がしっかりまとまってて聞きやすかったな。



けんじ:まあこんなもんですかね。でもなんか、常に次回作に何かを期待させる感じはあるね。

きょん:そうだね。特に今回は次どこいくんだろうって感じだったな。俺『setagaya~』は割と最初聴いたときから好きだったからさ。…今回は、好きだけど、ライトな感じになったから、次またこういう感じだったら、ああこういう路線でいくんだなって確信持てるし、次逆に卓袱台がえされたらどうなるかよくわかなんないし、もう(笑)

けんじ:まあ昨日あいつと話してて、今年もいろいろ卓袱台をひっくり返す構想が頭ん中で出来てるみたいだから、

きょん:っていう構想自体をあいつが自分の頭の中で卓袱台がえすじゃん(笑)

けんじ:ああ~、それもあるよね(笑)

きょん:「なんとかしようと思ったけどできなかった」とか(笑)

けんじ:そういう風に世の中を翻弄できるようになったら、まあ、ほんまもんですな。

きょん:まああいつは基本的に世界を中心になって回したい人だからね。まあそのために、やっぱ上の舞台いって欲しいけどね。

(終)